富良野の体験
富良野の風土と人が育む新しい「季節」――
それは、ワインの季節です。
Scroll
富良野のテロワール ― ワイン産地・富良野の現在地
富良野の大地には、風、土、水、森、そして人の営みが幾重にも折り重なって生まれた、かけがえのない風土があります。
その積み重なりは、静かに、しかし確かに、ワインの味わいとなって、この土地の個性を映し出しています。
富良野のテロワールとは、単なる自然条件の集合ではありません。
この土地で生き、つくり、受け継いできた人々の時間と思想、そして自然との向き合い方そのものです。
夏にはラベンダーが咲き、
冬には雪に包まれるこの地で、
その間の季節に、ぶどうは静かに実を結び、
ワインへと姿を変えていきます。
季節の移ろいの中で育まれてきたこの営みこそが、
今日の富良野のワイン文化を形づくっています。
富良野エリアのワインの
「現在地」
現在、富良野エリアのワインづくりは、
確かな転換点を迎えています。
冷涼な気候と昼夜の寒暖差、
火山灰を含む水はけの良い土壌、
そして四季の移ろいがもたらす長い熟成の時間。
こうした条件のもと、
富良野の生産者たちは、
単なる地域ワインの枠を超えた品質と個性を追求し続けてきました。
近年では、栽培技術や醸造手法の進化に加え、
畑ごとの個性を尊重するアプローチ、
樽や熟成環境への徹底したこだわりなど、
ワインづくりそのものが次の段階へと進んでいます。
それは「量より質」へ、
「商品」から「物語」へと、
ワイン産地・富良野が静かに、しかし確実に変化している証です。
富良野のこれから ― 富良野は、日本のボルドーになる。
この言葉は、単なる理想やキャッチコピーではありません。
冷涼な気候、昼夜の寒暖差、水はけの良い土壌、
長い時間をかけて育まれてきた農業の文化、
そして近年のワインづくりの進化。
それらが静かに重なり合い、富良野はいま、
ワイン産地として新しい段階へと歩みを進めています。
フランス・ボルドーがそうであったように、
一つの土地がワインによって評価され、
人を惹きつけ、文化を育て、
次の世代へと受け継がれていく。
富良野もまた、時間をかけながら、
その道を歩み始めています。
シニアソムリエ 高橋克幸氏の言葉 ― 「富良野は、日本のボルドーになる。」
この言葉を最初に口にしたのは、
シニアソムリエの高橋克幸氏です。
高橋氏がこの言葉に至った背景には、
近年の地球温暖化によって、
ボルドーの主力品種であるメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンの
完熟に必要な積算温度に、
富良野の気候条件が近づきつつあるという事実があります。
そしてこれからの富良野は、
単にぶどうが育つ土地ではなく、
ワインによって評価される地域として、
人を惹きつける場所へと変化していく——
その可能性を見据えた言葉でもあります。
ワイン総合コンサルタント/シニアソムリエ 高橋 克幸(たかはし かつゆき)
F PLANNING LAB合同会社 代表
(前 富良野市ぶどう果樹研究所 製造課長)
- 1988年、岩見沢東高等学校卒業後、北海道大学大学院農学研究科に進学。酵素および遺伝子解析の研究に従事。修了後は群馬県の正田醤油株式会社 発酵研究所に勤務し、発酵科学の基礎を磨く。
- 2000年、富良野市ぶどう果樹研究所(ふらのワイン)に着任。ぶどう栽培・ワイン醸造・販売戦略まで、ふらのワインのあらゆる領域に携わり、地域のワインづくりを支えてきた。
- 2005年、日本で初めて世界基準を満たすアイスワインの製造に成功。以降、日本ワインコンクールの審査員を務め、国内ワインの品質評価と技術向上に貢献。
- 2024年4月、長年の経験を生かし、“土づくりからペアリングまで”を一貫して支えるワイン専門コンサルタントとして F PLANNING LAB 合同会社 を設立。
- 栽培・醸造・プロデュース・テイスティングまでを横断的に担う、日本でも数少ないワイン総合コンサルタントとして活動を続けている。
富良野の現在地を形づくる、
4つのワイナリー
富良野エリアのワインの現在地は、
個性の異なる4つのワイナリーによって形づくられています。
地域の農業から生まれたワイン。
百年を超える農の時間を背景に持つ家族のワイナリー。
若い感性と新しい設備で品質を磨くワイナリー。
そして、自然のリズムに深く寄り添う新しい挑戦。
同じ風土の中にありながら、
それぞれ異なる思想と歩みを持つ4つのワイナリー。
その重なりこそが、いまの富良野のワインの輪郭を形づくっています。
富良野市 ふらのワイナリー
富良野のワインづくりの原点
富良野のワインづくりは、ここから始まりました。
1972年、富良野市が農業振興を目的に設立した
「富良野市ぶどう果樹研究所」。
自治体が自らワインづくりを担う、
全国でも数少ないワイナリーです。
当時、この地域では水稲からの転作が進み、
新しい農業としてワイン用ぶどうの栽培が始まりました。
寒冷地での栽培と醸造の研究は、
この研究所を中心に積み重ねられてきました。
2022年には設立50周年を迎え、
現在も富良野産ぶどうだけを用いたワインづくりを続けながら、
地域のワイン文化を支える役割を担っています。
研究と実践を重ねてきたこの場所には、
富良野の風土と向き合ってきた時間が息づいています。
その積み重ねが、富良野のワインの原点を今日まで支えています。
上富良野 多田ワイナリー
農の時間から生まれたワイナリー
TADA WINERY を営む多田農園は、
1901年(明治34年)に兵庫県から上富良野に入植した
百年以上続く農家です。
長く野菜づくりを続けてきた農園は、
2007年、700本のピノ・ノワールの植栽から
ワイン用ぶどうの栽培を始めました。
多田さんが長年抱いてきたワインへの思い、
そしてアメリカ・ナパバレーを訪れた経験。
それらが、長年培ってきた農業の知識や技術と結びつき、
ワイナリーの誕生へとつながりました。
現在は子どもたちがUターンし、
家族で農園を支えながら、
ぶどう栽培とワインづくりが続けられています。
畑に向き合う時間の積み重ね。
その農の記憶が、一本のワインの中に静かに息づいています。
ここには、農業の時間がそのままワインの時間へとつながる風景があります。
中富良野 ドメーヌレゾン
富良野のポテンシャルを引き出すワイナリー
中富良野町にあるドメーヌレゾンは、
山梨県勝沼の老舗ワイナリー「まるき葡萄酒」を母体とする
レゾングループが北海道で創業したワイナリーです。
2017年の創業以来、
富良野盆地の気候条件を背景に、
自社ぶどうを中心としたワインづくりを進めてきました。
近年は国内のワインコンクールでも高い評価を受け、
日本ワインコンクール2024では
「中富良野ソーヴィニヨンブラン 2023」が
最上位のグランドゴールド賞を受賞。
さらに2025年には、
「貴腐 中富良野ケルナー 2024」が極甘口部門で金賞を受賞しました。
若い醸造家たちが中心となり、
この土地の気候を生かしたワインづくりに挑み続けています。
その感性と技術が重なりながら、
富良野のワインの可能性を広げています。
このワイナリーには、
富良野の未来を実力へと変えていく力が息づいています。
上富良野 カムイ・メトッ・ヌプリ
自然のリズムと向き合うワイナリー
上富良野町の丘陵地に広がる
トミハラヴィンヤード。
その一角に建つワイナリーが
カムイ・メトッ・ヌプリです。
国内最大規模の有機農場を運営する
トカプチ株式会社が設立し、
2023年にワイン醸造を開始しました。
名前の「カムイ・メトッ・ヌプリ」は
アイヌ語で
「神霊ある山の尾根」を意味します。
畑ではビオディナミの考え方を取り入れ、
自然のリズムに寄り添ったぶどう栽培が行われています。
主力品種は北海道生まれの黒ぶどう「山幸」。
ワイナリーは八角形の建物が特徴で、
テラコッタなどを用いた醸造にも取り組んでいます。
十勝岳連峰を望む丘の上で、
この土地の自然条件をそのまま映すワインづくりが
静かに続いています。
富良野の現在地の中でも、ひときわ新しい輪郭を描く場所です。